視覚電気生理学

網膜検査に必要不可欠なツール

視覚電気生理学とは?

電気生理学とは細胞への刺激に対する電気的性質の測定、またそれらを用いた実験技術を意味します。視覚電気生理学の分野においては、網膜が光を感じた際に発生する電位を測定し、網膜が正常に機能していいるかどうかを検査することを網膜電位図(ERG)と呼びます。網膜電位測定を行うことにより、眼科医療専門家は光刺激に対する網膜の反応を他覚的に評価することが可能となり、また患者の視機能に影響を与える可能性のある網膜の機能的変化も確認することができます。

ERG測定中は、被検眼に光刺激を与えると網膜電位が変化して波形が得られます。その波形の振幅(波の大きさ)と潜時(光刺激から最大振幅に到達するまでの時間)を結果表示します。光が被検眼に入った後は、まず初めに光受容体(視細胞)に到達し、そこで最初の電気反応が測定されます(a波)。この電気反応は、網膜中層(双極細胞)において更なる反応を引き起こし、b波が得られます。そして最後に、網膜神経節細胞に由来する電気反応(PhNR: Photopic negative response)が測定されます。

被検眼の順応状態と、光刺激の時間や強さなどに応じて、杆体系または錐体系のERGを別々に測定することができます。どこの施設で測定したデータでも正しく比較できるように光刺激の種類、頻度、および時間は、国際臨床視覚電気生理学会(ISCEV)によって厳密に定義されています。網膜に存在する潜在的な機能異常について包括的な情報を得ることは小児, 遺伝性網膜疾患などにおける複数の病理についてのとても役立つ情報を提供します。

どのようにしてERGが行われるのか?

図1:従来型のERG

ERGは1940年代後半に導入されてから現在まで長い道のりを歩んできました。以来、光刺激と測定精度に関する継続的改善が行われてきました。従来型のERG(図1)では、被検眼は散瞳剤、点眼麻酔を滴下し、電極を角膜に取り付けて測定していました。2つの電極を被検者のこめかみと耳に装着し被検者は被検眼をガンツフェルドドームに近づけ、そこから光刺激を与え測定を行います。測定した電気反応の結果は波形としてPC上に表示され、ERGの結果に異常がないかどうかを判断することがとても大変でした。

近年、技術の進歩(図2)により、網膜電位図装置は手持ち型へと改良され、被検者が装置の方へ移動するのではなく、装置を被検者の眼の近くに持っていくことで測定が可能になりました。最新の皮膚電極技術を採用することで、従来のERG検査に比べ侵襲性が低く被検者の快適さ測定時の衛生面も格段に向上しました。検査結果は本体に自動的に表示、保存され、異常な結果を識別するために、正常な被検者の年代毎の正常者データと簡単に比較することができます。

図2:RETeval®のERG

どのような場面で網膜電位図(ERG)は役に立つのか?

網膜に関する詳細な情報を層別に、また他覚的に測定できることは、電気生理学分野において小児, 遺伝性網膜疾患、網膜血管などにおいて効果を発揮します。

  • 一般的な網膜全体の機能評価
  • 白内障の術前評価
  • 網膜中心静脈閉塞症
  • 網膜中心動脈閉塞症
  • 糖尿病網膜症
  • 原因不明の視力低下
  • 遺伝性網膜疾患
  • 弱視との鑑別
  •  

電気生理学を応用することで、網膜中心静脈閉塞症の視力予後を予測することができます[Miyata]。また他の症例では、 成熟白内障に対する術前検査においても有効性が報告されています[Cruz]小児や遺伝性網膜疾患の診断には、電気生理学は視覚障害の原因を理解するために必要不可欠な検査です。これらの疾患において、眼底検査などの形態(構造)検査異常を認めないものもあるので、ERGの重要性がますます高まっています。

ERGは、臨床検査、診断目的に加えて、医薬品開発のための毒性評価、再生医療や薬物療法での治療効果の確認、網膜への安全性および有効性を確認する非臨床試験で使用することが可能です。[Brigell; et al. (2005)]

あなたは国内の医療関係者ですか?

これより先のページでは、医療関係者の方を対象に、主に当社眼科機器製品に関する情報を提供しております。 国外の医療関係者、一般の方への情報提供を目的とした内容ではありませんので、対象外の方は閲覧をご遠慮ください。